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JTS リポート担当 「週刊東洋経済」掲載記事サンプル
■週刊東洋経済 1996年4月13日号 30ページ掲載■
『トイ・ストーリー』で本格化する三次元CG映画
「ハリウッドを襲うデジタル旋風」
パソコンを駆使して映画製作、インターネットで販売。
デジタル革命でアメリカ映画が一大変革期を迎えている
JTS米支局ライター ジェシー・バネミ/出口真紀子
昨年12月、全米で公開されたディズニー・アニメ映画 『トイ・ストーリー』 は空前の大ヒットとなった。大晦日の週末だけで記録破りの1940万ドルを稼いだ。
『トイ・ストーリー』 は、全編最新のコンピュータ・グラフィック
(CG) 技術だけで制作した史上初の長編映画。ハリウッドの画期的なアニメーションとして注目を集めた。
ウォール街もハリウッドのデジタル化に期待を寄せ、昨年11月、『トイ・ストーリー』
を制作したピクサー・アニメーション・スタジオの株式公開では、株価が一気に77%上昇。会長兼CEOのスティーブン・ジョブス(マッキントッシュ・パソコンの生みの親)
は一夜にして億万長者になった。
デジタル化するハリウッド
CGを駆使したハリウッド映画といえば、リアルな恐竜のシーンで観客を震わせた
『ジュラシック・パーク』 (93年) が有名だが、『トイ・ストーリー』
は77分の作品すべてCGで制作した。『トイ・ストーリー』 には当然、舞台装置やセットはない。117台のワークステーションが、80万時間をかけて11万フレームを制作した。たとえば1週間フル稼動しても、アニメ・フィルムは3分半ほどしかでき上がらない。『トイ・ストーリー』
の完成には4年の歳月を要した。
それでも、『トイ・ストーリー』 の制作費約3000万ドル (業界関係者予想)
は、ハリウッドではかなり低予算だ。最先端技術や機器は必要だが、人員を抑えたからだ。4年間でピクサー社のスタッフは24人から110人に増えたが、アニメーターは28人にすぎない。たとえば、CGを駆使しない、通常のディズニー・アニメ映画
『ポカホンタス』 (95年) では、アニメーターは2倍、スタッフ全体だと5倍をかけていた。
また、デジタル映画は再生自在で、簡単にCD-ROMやゲームにパッケージし直せるメリットもある。
スコット・ロスは、初めてCGの立体的なキャラクターが登場したSF映画
『アビス』 (89年) を制作したジョージ・ルーカスのインダストリアル・ライト&ソ\\'83Wック
(ILM) の元スタッフ。 『エイリアン』 や 『ジュラシック・パーク』
のSF (特撮技術) 担当・スタン・ウィンストンや 『アビス』 などでデジタル・キャラクターの制作に挑んだジェームズ・キャメロンとともに、デジタル・ドメイン社を設立した。
IBMが支援するこのマルチメディア会社は、ハリウッドにSFXを提供して活躍している。
『インタビュー・ウィズ・バンパイア』 で、トム・クルーズ演じる吸血鬼が炎に包まれるシーンも、デジタル・ドメイン社がトム・クルーズの演技と本物の炎を継ぎ目なく合成したものだ。
このようにハリウッドでは、ディズニーやソニー・ピクチャーズのような大手だけでなく、中小企業の活躍の場も広がっている。デジタル化技術の進化によって、低予算でも高級感のある効果を用いた映像が可能になったからだ。
サンタモニカにあるバズF/X社も、そんな会社のひとつだ。2月に設立したばかりで社員は6人だが、仕事には事欠かない。実在しないシーンをコンピュータでつくり上げる技術があるからだ。バスF/X社に依頼すれば、撮り忘れたり、紛失・損傷したシーンを撮影済みのフィルムから組み立ててくれる。たとえば、俳優がブーツからナイフを取り出すシーンとナイフを投げたあとのシーンがあれば、ナイフを投げ出すシーンができるといった具合だ。
この技術を駆使して、バズF/X社はアポロのようなシャトルが登場する電力会社のCMなどを制作する一方で、『ウェポン』
という新しい映画のプロジェクトを進めている。
映画製作はインターネットで……
才能、ビジョン、労働、低予算、それに数台のパソコンとインターネット。これだけそろえば映画製作も販売もできる。未来の映画製作はパソコン環境がカギを握っていると考える人さえいる。
バージニア州のフィル・フローラは、「ハリウッドは恐竜みたいなもの」と表現する。ハリウッドの巨大さや権威を称えているのではない。恐竜のように巨大ゆえ絶滅の危機を迎えるだろうと皮肉ったのだ。
フローラは、ハリウッドで経験を積んだのちに東海岸へ移り、自作のSF映画
『ゼネレーション・ウォー(世代戦争)』 で成功した。2025年が舞台のこの映画を、わずか3台のパソコンでつくり、コピーをインターネットを通じて販売している。
『ゼネレーション・ウォー』 は 『トイ・ストーリー』 のようなアニメではない。フローラは自宅のリビングルームを黒一色に統一し、その黒をバックに演技する本物の俳優数人を撮影。そして、黒のバックを取り除き、コンピュータで創作したセットと合成するという手法をとった。
低解像度や音声のズレなど課題は数多い。だか、フローラはひるまない。「パソコンの映画制作技術は著しく進歩している。同時に、コストも驚くべき速さで落ちている。」
「次の映画はおそらく世界各地に住むデジタル・アーティストによってつくられるだろう」。フローラは熱っぽく語る。『ゼネレーション・ウォー』
では、インターネットを通じて、米国各地に住むデジタル・アーティストの参加を得た。現在はWWW
(ワールド・ワイド・ウェブ) を通じて、ロシア、オーストラリア、欧州などのアーティストも関心を寄せている。「WWWは映画のプロデューサーを、自分だけの全世界ビデオ販売網やテレビネットを持っているような気分にしてくれる」。
3D (立体) アニメやCG技術がもたらす新しい可能性や自由を、映画製作者は歓迎している。一方で、業界の誰もが「『トイ・ストーリー』
が素晴らしいのは最新のCG技術のせいだけではない。主人公のウッディもバズも、それぞれのキャラクターが生き生きとしていて、思わず応援したくなるような気持ちにさせてくれるからだ」(バズF/X社リック・オスティギー社長)
と強調する。
最新のテクノロジーは、素晴らしいストーリーやキャラクターと出会うことによって、映画の新しい時代を切り開いていく。
■週刊東洋経済 1996年7月6日号 139ページ掲載■
PC/パソコン散歩道
「米国インターネット規制の行方」
最近インターネット画面でよく見かける青いリボンの意味をご存じだろうか?米国電子フロンティア財団
(http://www.eff.org) が後援している「ブルーリボン・キャンペーン」のシンボルマークである。
このキャンペーンは、今年2月8日に成立した米国通信改革法の通信倫理法条項に抗議し、言論の自由
(FREE SPEECH) をインターネット上でも確保しようとする運動である。さまざまな企業や個人が各自のホームページに青いリボンのマークを掲げ、キャンペーン支持を表明しているのだ。
もし通信倫理法が実際に運用されれば、「わいせつ」「明らかに不快な」文章や画像を載せたホームページの管理者は犯罪人として扱われることになる。同法の狙いはポルノ画像の氾濫防止を狙っているが、エスカレートすれば歴史的な美術品(たとえばミケランジェロのダビデ等) も倫理法違反になる可能性さえ出てくる。ユーザーが過剰反応し、インターネットの国際情報源としての価値が低下することは明らかだ。
6月12日、フィラデルフィア連邦地裁は、通信倫理法の施行停止を求めて市民団体が起こした訴訟で「通信倫理法は違憲」との判決を下した。問題は最高裁まで争われる見通しだが、アメリカのインターネット企業や公民権支持団体等はそろってこの判決を絶賛、ブルーリボンも勝利を謳歌している。
一方、日本では通産省が自主規制ガイドラインを出しており、情報プロバイダに対する警察の家宅捜索も起きている。そろそろわが国も青いリボンをつける時期がきたのかな?
(ジャパン・トランスレーション・サービス・ライター 森田依子)
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